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交錯する街 [当代上海]

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先日、上海で活躍されている写真家・海原修平さんにお会いしました。
写真集『消逝的老街』(消えゆく旧市街)に収められた激動の上海。当時からこの街に
住み、ずっと目撃してきた海原さんから見れば今の上海は“それなり”に落ち着いている
そうです。
確かに私たちの目に映る現在の上海は地下鉄の建設工事が目立つくらい。
租界時代の住宅地に対する地上げも再開発による取り壊しも高層ビルの建築も目を
見張るほどの勢いはなく、ひろネコが追いかけきた老上海と当代上海との対比は
悔しいけれどその頃と比べたら既にピークを過ぎていてインパクトが足りないことは
否めません。

それでもこの街は留まることを知らず、かなりの速度を維持したまま日々刻々と更新
されているわけですから、程度の差こそあれ、その勢いはやはり凄いとしか言いよう
がありません。

この街を好む日本人には嘗ての高度経済成長期の日本を重ねている人も多く、まるで
その頃に戻ったかのような錯覚に酔いしれているようにも見えます。
誰もが成長と発展を渇望し、どんなことにでも挑戦し、転んでも立ち上がり、振り向
きもせず、「もっと!もっと!」と上を目指していた時代に。

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しかし時代というのは常ならぬもの。
約10年続いたデジカメブームがすっかり冷え込んでしまったように、この街にも
経済的な陰りが見えはじめました。
最低賃金の引き上げは数年前に入社した中堅社員の現行給料よりも最近入社した
新卒社員の初任給の方が高いという摩訶不思議な現象を引き起こします。
それを是正するには中堅社員や老員工の給料を引き上げるしかなく、経済全体の
コストは年々上昇を続けることに。
加えて地価が値上がり、家賃が値上がり、ガソリンが値上がり……物価はさらに上昇。
もはや「中国は安い!」などと呑気なことを言っていられなくなったのは皆さんも
承知の事実。

自動車のナンバー・プレートが一式で11万元(≒180万円)もするようになったのは
政策的に新車の登録台数を制限していることとも関係しているようですが、まさに
ウナギ昇りな物価の上昇と老百姓のささやから昇給とでは比較にならず、実質的な
可処分所得は減るばかり。
年々嵩む子供の養育費を考えると以前のようにアレもコレも買うわけにはいかない
けれど、物欲は留まることを知らず……
多少値が張ってもオールインワンのスマホやiPhoneをゲットしてこれ1台で済ませて
しまおうと考えるのは老百姓の道理からすれば当然のこと。
電脳(パソコン)も手机(ケイタイ)も游戏机(ゲーム機)も数码相机(デジカメ)
もアレもコレも欲していたらいくらお金があっても足りないことは火を見るよりも
うにゃらかなのです。

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デジカメ・ブームで賑わっていた星光撮影器材城も今や“風前の灯”の状態。
「上海の銀座」とも呼ばれる淮海中路などを歩いていると春節前あたりから閉店する
店がボチボチと出はじめました。
春節が明けて「次はどんな店になるのかな?」と通りかかる度に見ていた貸し店舗も
“装飾”の工事がはじまるわけでもなく、そのまま放置されているところが増えています。
“如龍得雲”(Ru Long De Yun)、すなわち龍の雲を得たるが如く天にまで昇ろうと
していた経済発展という名の魔物の行方を上海人は財布の紐を締めて見守っているの
かもしれません。

女朋友(彼女)なんていようものなら花銭(お金を使う)ばかりだし、家もクルマも
高くて買えないから結婚したくてもできないし……あ~、もうどうでもいいやぁ!
そんな現在的年軽人(若者)を見て「だらしないなぁ」などと思う人は黙ってても
ソコソコの年金が手に入る団塊の世代だけ。
すでに始まっている高齢化社会を支える現代的年軽人たちには前世紀とはまた違った
苦労が絶えいないのであります。

10年後、いや5年後の上海を的確に予想できる人は果たしてどれだけいるでしょうか?
もしかしたら1年後の上海ですら的確に予想することなどできないかもしれません。
何故ならこの街は他のどの都市よりも速く、そして大きく変化しているように思える
からです。

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まもなくこの街を去ろうとしている私が、再びこの街を訪れるのはいつの日か?
その時の上海はいったいどんな街になっているのか?
静安別墅や田子坊など、租界時代の名残が色濃いレンガ造りの建物は?
外灘から眺める浦東新区の最新の高層ビル群は?
道端に椅子を並べて日向ぼっこしている里弄の老爺爺たちや老奶奶たちは?
そんなことを思い巡らしながら上海での残された時間を過ごしているひろネコです。

 

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Hologon (ホロゴン) について 

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Carl Zeiss Hologon 16mm F8 T*はドーム型の前玉が美しい3群5枚のスーパー
ウルトラワイドレンズ。
ひろネコ仕様のHologon はContax G Mount を Leica M mount に改造したもの。

歪曲収差はほぼゼロ。
ただし周辺光量はメチャ落ちで、フィルムならまだしも、レンズ後端から撮像素子へ
の入射角にシビアなデジタルカメラでの使用はかなり厳しいです。
お世辞にもリーズナボーとは言えないレンズなのに更にコストを掛けてマウント改造
するのは狂気の沙汰かもしれませんが、この美しいフォルムと極めて歪みの少ない
Ultrawide の「シャキ~ン!」とした画を見てしまうと完璧にKnockout!です。

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Leica M Monochrom との組合せ (View Finder はCarl Zeiss の15mm用)

剥き出しの前玉とシャッター幕との間隔が1mmにも満たない後玉。
極端に短いバックフォーカスを持った特殊なレンズで、取付可能なカメラはLeica と
言えどもそれなりに限定されていて、M5 やCL に付けると腕木のような露出計が
干渉して「バキッ!」
Mount Adapterを介してLeica 以外のカメラに付けるとシャッター幕に接触して
「バキッ!」
裏蓋を開けてシャッター幕との干渉を確認できるM2 やM3 と違って、裏蓋のない
デジタルのM Monochrom に初めて取り付ける瞬間は神に祈る思いでした。
良い子の皆さんはその点についてくれぐれもお忘れなく、自己責任でお願いします。

描写についてはご覧のとおり。
強烈なパースペクティブと周辺光量落ちをどう生かすかがこのレンズを使う醍醐味。
16mmという焦点距離にF8という固定絞りなので、ピントリングを1.5mにセット
しておけば視界に入るすべての物体にピントが合ってしまうほどの被写界深度を
持っていてスナップでの機動性は抜群ですが、一方、強烈なパースペクティブに
振り回されて水平や垂直を出すのに少々苦労します。
M9 では使い物にならないと聞いていた色ズレもM Monochrom では没問題。
(モノクロだから当たり前か?!)
他のレンズにはない強烈な個性の持ち主なので、一度ハマると病みつきになります。

 

最後に、上海で活躍する写真家・海原修平さんの『消逝的老街』をご紹介します。
20世紀末、1996年から2000年にかけて歴史的にも文化的にも大きな変化を遂げた
上海。その過程をパノラマカメラを駆使した独自の表現で収めた貴重な写真集です。
既に入手困難かもしれませんが、見つけたら速攻でゲットすることをお勧めします。

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記念にサインしていただきました♡

ひろネコにとっては海原さんとの出会いと共に自分の生き方を見つめ直す切っ掛け
となる大切な一冊になりました。 海原さん、ありがとうございます。

 

 

海原修平さんのHP: http://kaiharashuhei.com/
Blog 『海上撮影家が見た上海2』: http://blog.goo.ne.jp/shanghai_eye

 

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かいはら

ひろネコさん
写真集を紹介いただきありがとうございます。
どうですか?日本の空気も飯もうまいでしょう。

また、日本か上海で一杯。


by かいはら (2014-04-29 02:27) 

hironeko

かいはらさん
あいや~、空気ってこんなにも澄んでいたとはっ!
遠くまで良く見えるし、新緑が眩しいくらいです。
飯もうまくて、ん~、世は満足じゃ(笑)

連休明けからしばらく新潟へ。
その後は再び……上海で一杯やれる日もそう遠くないかもしれません。
by hironeko (2014-04-29 12:23) 

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