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相棒 [自言自語]

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何かに集中したい時、あるいは何も考えたくない時に、コイツはこの上ない相棒。
多くは語らず、夜の街道をひたすら走る。

クルマと信号が多すぎてストレスが溜まる。
逸る気持ちを抑えて、我慢。

前方にウンザリするほど連なるテールランプ。
一気に抜き去りたい気持ちを抑えて、我慢。

長い下り坂を経てバイパスに出ると、長い間数珠繋ぎだったクルマの列がバラける。
しかし、それも束の間だった。

どんなに自由を求めても、必ず何かが立ち塞がる。
どんなに速さを求めても、必ずどこかに限界がある。 

バイパスが終わる頃になると、前方のクルマは一台、また一台、右に左に逸れて
気づいた時には一台の大型トラックと僕だけがランデブーするように走っている。

トップギヤで2500prm、制限速度+α。
大型貨物船に引かれるタグボート(本来は逆か)のように一定の車間距離を保ちながら。

峠道に差し掛かると、前方から濃い霧に包まれる。
橙色のセンターラインと路肩を示す白色のラインの間を右へ左へとトレース。

タコメータの文字盤には外気温10℃の表示。(体感温度は明らかに一桁だ)
敢えて時計を表示していないので現在の時刻はわからない。

これ以上ないというくらい単調に2台だけのランデブーが続く。
時折すれ違う対向車のヘッドライトに幻惑されて見失う片側三連のテールランプ。

このままどこまでも、どこまでも続いてゆきそうな長い長い道のり。
時間を忘れ、場所を忘れ、ひたすら走り続ける。 

永遠に続くと思われていたランデブーが一つの信号によって遮られた。
けれどその信号は正に僕が曲がるべき交差点だった。

何かに取り憑かれたように走ってきて、危ういところで我に返る。
これと似た感じが、ずいぶん昔に・・・そう、あれは真夜中の狩勝峠だった。

その時のトラックは居眠り運転で路肩に突っ込んだ。
うっかりすると自分も巻き込まれるところだった。

冷たい雨の降る中、バイク(GPZ400R)を路肩に停めてトラックに駆け寄ると
ドアを開けて運転手が降りてきた。

運転手は無事で、無線で知らせるからオマエは先に行け!と言った。
ずっと一緒に走ってくれてありがとう!

そう言い残して僕は一人で雨の狩勝峠を下った。
それから長い時間を掛けて札幌、そして函館へと向かった。

長万部の海岸線を走っていると水平線の向うから朝日が昇ってきた。
その光芒の中を一艘の漁船が横切る・・・

あの時の光景は今でも忘れられない。 

 


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